レディ・マエストロ
De dirigen(The Conductor)
G
スクリーン 
11/8 - 11/22(予定)
上映開始日:11/8
上映終了日:スケジュールで確認ください
オランダ
監督:マリア・ペーテルス
クリスタン・デ・ブラーン、ベンジャミン・ウェインライト、スコット・ターナー・スコフィールド
オフィシャルサイト
Shooting Star Filmcompany - 2018

レディ・マエストロ

音楽というのは、愛や哀しみ怒りや勇気など人間の感情を表現したり、美しい景色や戦争の悲惨さなどを「音」で表現する芸術です。

何かの楽器を楽譜をみて演奏する人にはわかると思いますが、楽譜にはきっちりと音符とテンポ(演奏する速さ)と、どのくらいの音でどのように演奏るのか書かれています。それでも楽譜通りに弾いても、同じに聴こえるとは限りません。楽譜をさらに独自に解釈すると、もっと違う雰囲気になります。

それぞれの奏者がきっちりと楽譜を読みこんんでいたとしても、クレッシェンド(だんだん音を大きくする)と楽譜に書いてあったとしたら、どれくらいのペースで「だんだん」なのか、どこまで音を大きくすればいいのかなど、楽譜通りでも幅はあります。また、交響楽団などは何十もの楽器の奏者がいるので、他の楽器と重ねて演奏する際には、どちらの楽器の方がより響いた方がいいのか、などのバランスもあります。

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映画に例えると、楽譜はシナリオ、指揮者は監督のようなものでしょうか。
シナリオに
A「こんにちは」悲しそうにいう
B「なんかあった?」心配そうにいう
と書いてあっとします。
それを、Aが涙を目にためて悲しそうに言って、Bが本気で心配そうに尋ねるのと、Aがわざとらしく悲しそうにしていて、Bは皮肉っぽく心配そうに言うのでは映画を見た人の印象が変わるように、楽譜もどう解釈するのかで印象が変わります。

映画監督がどういう風にシナリオを表現するのか俳優と事前に打ち合わせしてリハーサルをするように、指揮者もコンサートやレコーディングの本番前に楽譜のこの部分はこういう風に演奏してくださいとか、この楽器はこれくらいの音量にしてくださいなどとリハーサルして楽団をまとめます。また、演奏者はどこをどういう風に表現するのかと、指揮者のどの身振りが何を表しているのかなどを事前にリハーサルで確認して、本番となります。

そのため、指揮者はコンサートの時に指揮棒を振るだけでなく、演奏する楽曲(音楽)をどう表現するのかというものを決める役割もあるので、有名な指揮者の演目が注目されたりするわけです。(なので、同じ楽曲(音楽)を違う指揮者の元で演奏されたものを聴き比べるとなかなかおもしろいです。)

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本作品『レディ・マエストロ』のモデルとなった1902年生まれのアニトニオ・ブリコが生きた時代は、ようやく欧米で女性が選挙権を与えられたくらいの時期です。(アメリカに女性の参政権が認められたのは1920年。日本ではそれよりもはるかに遅く戦後1945年です)そんな中、演奏者に指示をだし解釈を与え、まとめる役割である指揮者のポストは、女性には開かれていませんでした。それでも、指揮者になりたいと自身の夢を叶えようとする姿は、「女性だから」という理由で反対されたり、見下されたり、何かを諦めたり、やっても無駄だと言われたことがしたことのある女性なら、きっと心動かされるものがあると思います。

「女性は底辺にいれば、欲しいものは男から施してもらえる」というような男にセクハラを受けるのは、残念ながら今の時代でもまだまだあります。それでも、諦めずに夢を追いかけていく姿には勇気づけられます。近年の「me too」ムーブメントのように、まずは女性が声をあげていくことも大切ですが、女性の地位がなかなかあがらないのは女性のせいだけではなく、男性の理解が深まることやサポートが必要だと男性の意識が変わらないと、才能ある女性が活躍していく場は広がってはいかないでしょう。

また、本作品中のロビン役のスコット・ターナー・スコフィールドは、 性別という枠を取り外す活動を行なっている俳優です。(ネタバレになるので、映画の中でどういう役か言いませんが、映画の役と俳優本人は共通点があります。TEDでの講演などでその活動の趣旨がわかるので、興味がある方は見てみてください。)

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本作品中、多くのクラシック音楽が奏でられます。マーラーの「交響曲第4番、ビゼーの「カルメン」、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」、ストラヴィンスキーの「火の鳥」、ドビュッシーの「夢」、エルガーの「愛の挨拶」、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」など、ほとんどが名曲を集めた「クラシック名曲アルバム」的なものに必ず入っているような有名なものばかりです。(パンフレットにそのリストが載っています)

素晴らしいクラシック音楽を楽しみながら、女性に厳しい社会の今後のあり方などの社会問題を考えさせられる本作、ぜひ劇場にてご鑑賞ください。