ハイテンション
2000年代初頭、ホラー不毛の地フランスで突如勃発したニューウェイブ・オブ・フレンチホラー・ ムーブメントの先陣を切り、フランス発のホラー映画を世界的に認知させる大きなきっかけとなった記念碑的作品が、アレクサンドル・アジャ監督の長編2作目『ハイテンション』(03)だ。
同胞の『屋敷女』(07)や『マーターズ』(08)のみならず、ジェームズ・ワン監督の『ソウ』(04)やイーライ・ロス監督の『ホステル』(05)といった、ホラーファンの誰もが知る2000年代を代表するハリウッドのエクストリームなホラーよりもいち早く、この衝撃作が誕生していた意味も極めて大きい。若い女性が主人公のエクストリームなゴア描写と意表を突くツイストを含むスラッシャーに、ダークなサイコロジカルホラー、時に繊細で屈折したラヴストーリーをも融合した、フランス人特有の感性が込められた濃厚な組み合わせが独創的な『ハイテンション』は、20年以上経った今も決して色褪せることがない。
近年ジュリア・デュクルノー監督の『TITANE/チタン』(21)がカンヌ国際映画祭でパルムドールに輝き、コラリー・ファルジャ監督のボディ・ホラー『サブスタンス』(24)がアカデミー賞で作品賞を含む5部門にノミネートされるなど、フランス人監督によるホラーの隆盛が顕著だが、その源流にあるのが『ハイテンション』なのだ。また同作のシニシズムと虚無的なエンディングは後世のホラーに脈々と受け継がれているが、その代表的作品がアリ・アスター監督の『ミッドサマー』(19)であり、オズ・パーキンス監督の大ヒット作『ロングレッグス』(24)だろう。
そう考えるとこの2025年 は、『ハイテンション』を再訪、もしくは初体験するのに絶好のタイミングではなかろうか? 映画館の大スクリーンで洗練された4Kバージョンを観られるこの機会を、決して見逃すな!
過激な殺人描写が公開当時、センセーションを巻き起こしたフレンチ・スラッシャーの金字塔。女子大生が友人の家でとんでもない惨劇に遭遇。殺人鬼によってさらわれた友人を救出するため単身決死の戦いを挑む。そしてクライマックスで明かされる衝撃の真犯人とは?!
主演はフランスの人気女優、セシル・ドゥ・フランス(『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(21)『画家ボナール』(23))と、今は監督としても活躍するマイウェン(『フィフス・エレメント』(97)『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』(23))。
監督は本作でその才能を認められ、以降、『ヒルズ・ハブ・アイズ』(06)『ピラニア3D』(10)『クロール 凶暴領域』(19)といったヒット作を手がけ、ハリウッドを拠点に活躍する鬼才アレクサンドル・アジャ。リュック・ベッソン率いるヨーロッパ・コープが製作、『屋敷女』(07) 『マーターズ』(08)などのフレンチホラー・ムーブメントの口火を切った重要作が20年ぶりに4Kで復活!ぶっ殺してでも、あんたを助ける!!
<ストーリー>
女子大生のマリーは親友のアレックスとともに、彼女の実家に車を走らせる。2人は都会の喧騒を逃れ、静かな田舎で試験勉強に励む予定だった。夜遅くにようやくアレックスの実家に到着した2人だったが、その直後、トラックに乗った謎の中年男が玄関先に現われ、手にした刃物でアレックスの両親と弟を次々と惨殺する。物陰に隠れ、必死で息を潜めるマリー。ところが、今度はアレックスが殺人鬼に捕まり、トラックで連れ去られてしまう。
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