愛されなくても別に
原作は2021年に第42回吉川英治文学新人賞を受賞した武田綾乃の同名小説。テレビアニメ化などで大ヒットした「響け!ユーフォニアム」シリーズ作者による、新時代の青春ストーリーが、若干29歳の新鋭監督・井樫彩の手で実写映画化された。『溶ける』(16)が第70回カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門に日本人最年少で正式出品され、続く『真っ赤な星』(18)も、レインダンス映画祭コンペ部門にこちらも長編映画として日本人最年少で正式出品。本作は待望の長編新作映画となる。
井樫は「苦しみや痛みは大きさで測れるものではないし、誰かと比べるものではないと今はわかっている。 “愛されなくてもいい”と言いながらも他者の手を取り、握ってしまうような…。『心』は一辺倒ではない。愛も苦しみも、とてもグラデーションのあるものだと思うから。」と本作に自身の思いを重ねる。
毒親、虐待、性暴力など家族間で生じる問題から社会のひずみに切り込みつつ、その世界をサバイブする彼女たちの清々しさと、「不幸中毒」からの脱却までを鮮やかに描いた傑作。 だが彼女たちは同時に、不幸を盾に他人と関わろうとしない自分の弱さも知っている。この映画はそんな彼女たちを、哀れみという束縛から解放するのだ。
<ストーリー>
宮田陽彩(みやた・ひいろ)は、“クソ”のような大学生活を送っていた。
大学に通い、それ以外のほとんどの時間を浪費家の母に変わっての家事とコンビニでのアルバイトに費やし、学費と家計を稼ぐ日々。遊ぶ時間も、金もない。
親にも友人にも、何かに期待して生きてきたことがない。
そんなある日、同級生・江永雅(えなが・みやび)のひょんな噂を耳にする。
「江永さんのお父さんって殺人犯なんだって」ー
他の誰かと普通の関係を築けないと思っていたふたりだったが、この出会いが人生を変えていく・・・。
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