ジュリーは沈黙したままで
短編『STEPHANIE』(20)がカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、いま最も注目を集めるベルギーの新鋭監督レオナルド・ヴァン・デイル。前作と同様に、長編デビューとなる本作でもスポーツ界におけるコーチと生徒の関係に強い問題意識を投げかける。
主人公・ジュリーを演じたのは、テニス歴12年の若きプレーヤーであるテッサ・ヴァン・デン・ブルック。そのリアルな競技描写で少女の意志の在処を感じさせる一方、試合に向けたサーブ練習、ジムでのトレーニング、ケガのリハビリといった断片的なシーンの連続が、スポーツを「逃げ場」として利用していることを浮き彫りにしていく。そんな本作の共同プロデューサーとして名を連ねるのは、社会問題に光を当て続けてきたベルギーの巨匠ダルデンヌ兄弟。また、この物語に共感を示したテニス界のスター・大坂なおみが、エグゼクティブ・プロデューサーとして後押しする。
現代アメリカを代表する作曲家キャロライン・ショウの観る者を包み込むようなボーカルスコア、35mmと65mmフィルムによる緊張と抑制の効いた美しい撮影は、自然の光の中に一人の少女の感情を繊細に浮かび上がらせ、その沈黙の行方を静かに見届ける。
<ストーリー>
ベルギーのテニス・アカデミーに所属する15歳のジュリー(テッサ・ヴァン・デン・ブルック)は、その実力によって奨学金を獲得し、いくつもの試合に勝利してきた。ある日、突然、担当コーチのジェレミー(ローラン・カロン)が指導停止になったことを知らされると、彼の教え子であるアリーヌが不可解な状況下で自ら命を絶った事件を巡って不穏な噂が立ちはじめる。ベルギー・テニス協会の選抜入りテストを間近に控えるなか、クラブに所属する全選手を対象にジェレミーについてのヒアリングが行われ、彼と最も近しい関係だったジュリーには大きな負担がのしかかる。それでも日々のルーティンを崩さず、熱心にトレーニングに打ち込み続けるジュリーだが、なぜかジェレミーに関する調査には沈黙を続ける……。
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