行き止まりの世界に生まれて
邦題『行き止まりの世界に生まれて』ですが、原題は『Minding The Gap』で、ロンドンのチューブと呼ばれる地下鉄の車内のドアが開くときに流れるアナウンスで、「ギャップ(隙間)にご注意ください」という意味です。原題も邦題もそれぞれ味があって、観終わった後どちらも腑に落ちます。
本作品はスケート(スケボー)する子どもたちのドキュメンタリーかと思ったら、いやいや、むっちゃ深かった。アメリカのラストベルト(錆びれた工業地帯)にあるくたびれた街で、コドモからオトナになるということ。失業率の高い荒れた街で荒れた家庭環境の中で子供時代を過ごすということ。そういう子供たちにとって家族とは、友達とは、スケートとは。
家庭内暴力をする側と受ける側と。自身も家庭内暴力を受けている親は被害者でもあり、受けてる子供に何も言わないことで加害者にもなる。そんな家庭に育ちながら、親になるということ。親と向き合うということ。親から教えてもらったこと。親から離れること。親と仲直りすること。
そういったものを赤裸々にリアルに撮り続けた年月は、日常だけどアメリカの現実を反映した現実で、人種問題についても取り上げられています。メインの3人は、白人、黒人、アジア人。そのそれぞれが抱える問題、葛藤、本音、気づき。それぞれの向き合い方、人生の進め方。ビンの眼を通して、映し出される世界は、哀しさよりも美しさ。切なさもあるのだけど、希望もあって、青春ってこんなもんだよな、と遠い昔を思い出したりしました。
編集もとてもよくて、映画のようなドキュメンタリー。友としての関係から見えるもの、見えないものもうまく撮れていて、監督が映るシーンや、街の状況を説明するニュースの入れ方や、街にある看板に描かれている言葉のチョイスが絶妙で、(私的に)今年のドキュメンタリーのトップにはいる作品です。
mid90's をご覧になった方は、ぜひ本作品もご覧ください。フィクションかドキュメンタリーの差はあれど、スケートの文化って、そうだよな、と思いつつ。スケートに始まり、スケートに終わる。スケートがあったからこそ、の作品。いろいろあった後のエンディングは最高でした。
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