燃ゆる女の肖像
映画には娯楽的要素が強い作品と、芸術的要素が強い作品と、その中間のような作品とがあると思いますが、本作品『燃ゆる女の肖像』は完全に芸術的作品です。
絵画にまつわる映画ですが、映画そのものが絵画のような美しく、セリフに頼ることなく眼差しや手の動きや後ろ姿だけで伝わる儚くて切ない想い、音楽(BGM)ではなく薪の音や足音など「音」で奏でる感情は観ている私たちの聴覚に訴えてきます。
洗練されていて、上品で、エロティズムすら芸術の域で、美しいとしか言いようがありません。フランス映画好きには堪らない、フランス映画らしい作品で、時代背景、風景、ストーリー、女性たち、ラスト、全てにおいて究極的に芸術です。
顔のない肖像、女中の決心、嫁ぐということ、姉や母の人生、燃える女、視るということ。いろいろなところにメタファーが隠されていて、女性が「一人前の人」として生きていけない時代に、女性としていることの哀しさ、怒り、弱さ、諦め、強さ、秘めた想い、喜びなどさまざまな感情を、(余計な音楽などいらないほど)ものすごく静かに、けれども燃えるかのように激しく描いています。最初と最後にチラリと映るくらいで、全編ほぼ女性のみで、「女性だけの時間」と「男性のいる現実」の対比も考えるものがありました。
燃ゆる女の肖像、、、、愛が燃える、感情が燃える、恋の炎が燃える。燃える女の肖像が表すもの、それまでと対照的に音楽が鳴り響くラストシーンの余韻。フランス映画、やっぱり大好きです。ニュージーランドの女性監督が撮った『ピアノ・レッスン』をちょっと思い出しました。芸術的な作品、フランス映画、『ピアノ・レッスン』やジェーン・カンピオン監督作品が好きな方は、ぜひご覧くださいませ。この美しさはスクリーンで堪能して頂きたいです。
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