スピリッツ・オブ・ジ・エア
Spirits of the Air, Gremlins of the Clouds
G
オーストラリア
監督:アレックス・プロヤス
マイケル・レイク、ザ・ノーム、ライズ・デイヴィス
オフィシャルサイト
1988 COMPANY BIZARRE PTY LTD.

スピリッツ・オブ・ジ・エア

本作品は、日本では1990年に第1回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で公開され、パルコ SPACE PART3のレイトショーで12週間のロングラン上映のあと、VHSは発売されたけれどその後DVDやブルーレイが発売されることもなく、マニアに絶叫的に支持されながら再公開はなく、なかなか観ることのできない「幻の作品」として語りつがれてきた『スピリッツ・オブ・ジ・エア』のデジタル・リマスター版となります。



好き嫌いがはっきり分かれる作品だと思いますが、好きな人にはたまらないすごい独特の世界観と映像美の作品です。私は30年前の公開当時観たことなく今回初めて観ましたが、冒頭から釘付け、たまらなく大好きな作品となりました。

毎回、食事の時に出てくる豆の缶詰いつからあるんだろうとか、パンは誰か配達してくれるのかとか、服はどう調達するのか、そもそも生活費はどうなっているんだろう、など詳細が気になってしまう方には納得できる作品ではないと思いますが、細かい設定は「ファンタジー」の一言で気にならない方なら、存分にこの世界を堪能して頂けると思います。とにかく、どこをどう切り取っても絵になる美しい映像と、不思議な流れと、夢と絶望。



砂漠にぽつんとあるモーテルに外国からやってきた女性が訪ねるところから始まる1989年公開の『バグダッド・カフェ』を彷彿させる冒頭ですが、本作品の方がよりアート的な気がします。赤茶けた乾いた大地は、同じくオーストラリアの映画『プリシラ」を思い出したのですが、オーストラリアのニューサウスウェールズ州の西端にあるブロークンヒルという場所で撮影されたそうです。



アレックス・プロヤス監督は、1980年代のオーストラリアの音楽を聴いていた人ならおなじみの INXS の「Kiss The Dirt」や、クラウデッドハウスの「Don't Dream It's Over」の(他にもフリートウッドマックやスティングの)ミュージックビデオの監督だということで、80年代の洋楽好きは一度はプロヤス監督のMVを観たことあるかもしれません。



舞台は砂漠の中の一軒家。シンプルな設定で、登場人物は3人のみ。舞台のような会話。

日本語のタイトルは『スピリッツ・オブ・ジ・エア』ですが、原題は『Spirits of the Air, Gremlins of the Clouds』で、日本語にはない『グレムリンズ・オブ・ザ・クラウド』のグレムリンはいたずら好きな妖精とか機械類を突発的に故障させるといわれる小鬼のことだそうです。タイトルも詩的ですねー。

広大な大地と、その上にある限りなく広い空。遠くに見える山脈の向こうにあるのは、果たして、、、。

アート系の映画が好きな方は、ぜひぜひこの機会に大きなスクリーンで、この世界観を味わってください。