ザ・パブリック・イメージ・イズ・ロットン
パンクな“パブリック・イメージ”に埋もれがちな誠実でウソのないジョンの魅力あふれる映画だ
セックス・ピストルズ時代はジョニー・ロットンと名乗っていたジョン・ライドンがフロントに立つ、PiL(パブリック・イメージ・リミテッド)の初のドキュメンタリー映画である。1978年1月のアメリカ・ツアー後にセックス・ピストルズから脱退してPiL“結成”に至るまでの動きから始まり、パンクの象徴だったジョンが道を切り開いたポスト・パンクの流れもわかる作りだ。ジョンとの確執が消えない面々を含む歴代メンバーの談話シーンの数々も見どころだが、挑戦的なPiLの活動史を通してジョンの人間性をあぶり出した映画でもある。オチャメなキャラはけっこう知られていると思うが、幼少の頃のエピソードからも伝わってくる家族思いのところをはじめ、パンクな“パブリック・イメージ”に埋もれがちな誠実でウソのないジョンの魅力あふれる映画だ。
行川和彦(音楽評論家)
ザ・パブリック・イメージ・イズ・ロットン
Universalのオフィシャルサイトより
セックス・ピストルズのヴォーカリストとして活動していたジョニー・ロットンが、1978年1月に脱退。
ジョン・ライドンと改名し(法律的な理由で)、パブリック・イメージ・リミテッド(PiL)を結成。
早くもその年の暮れにはデビュー作『パブリック・イメージ (Public Image - First Issue)』を発表。ライドンのパンク・ロックの旗手というイメージを裏切り、ロックを解体するかのような斬新なサウンドで、ポスト・パンクの先陣を切る。
翌79年には45回転12インチ3枚組で缶入りという特殊仕様にして傑作の誉れ高い『メタル・ボックス』を
発表。80年には初のライヴ盤『パリ・ライヴ』をリリース。3作目『フラワーズ・オブ・ロマンス』(81年)を発表、続いて日本でのライヴ盤『ライヴ・イン・TOKYO』(83年)をリリース。
以降、ライドンを中心にメンバーの変遷もありながらミクスチャー~ポップへと路線を変え『ジス・イズ・ホワット・ユー・ウォント』(84年)、『ALBUM』86年)、『HAPPY?』(87年)、『9』(89年)を発表するなど順調に活動を続けるが、92年にリリースした『ザット・ホワット・イズ・ノット』をもって活動を一旦休止。96年のピストルズの再結成、翌年の初のソロ作『サイコパス』の発表も挟みつつ、2009年にPiLは再結成を果たす。
メンバーはルー・エドモンズ(g)、ブルース・スミス(dr)に新加入のスコット・ファース(b)。エドモンズとスミスは1986年から1989年までの作品に参加、新加入のファースはジョン・ライドンによって見出されている。再結成を果たしたPiLのメンバーはジョン・ライドンをして“かってないほど素晴らしい”と言わせるほどで、ファン、評論家、プロモーターから支持されている。
2011年には、“サマーソニック2011”で22年ぶりの来日。
2012年、20年ぶりとなる新作『ディス・イズ・PiL』を発表。
そして2013年。2009年の再結成以来初のジャパン・ツアーで来日!来日記念盤 『レジー・ソング / アウト・オブ・ザ・ウッズ』も発売となった。
<メンバー>
ジョン・ライドン:
セックス・ピストルズのフロントマンであった彼は1978年にパブリック・イメージ・リミテッドを結成。PiLの活動以外にもソロ作品や他アーティストとのコラボレーション作品を多くリリースしている。また、クオリティTVのアピールにも力を入れている。
ルー・エドモンズ:
元ダムドのギタリストでマルチプレイヤーでもある彼は1986年にPiLに加入、アルバム『Happy?』のレコーディングに参加した他、『9』では共作者として作曲にも携わりPiLのサウンドに新たな魅力を加えるのに寄与している。
ブルース・スミス:
ザ・ポップ・グループやスリッツでドラムを叩いていたが、1986年に加入したPiLではパーカッションを担当し、『Happy?』と『9』の2枚のアルバムのレコーディングに参加している。名うてのドラマーと評価の高い彼ならではの職人技をグループに持ちこんだ。
スコット・ファース:
スティーヴ・ウィンウッド、ジョン・マーティン、エルヴィス・コステロ等数多くのトップクラスのミュージシャンおよびバンド達との活動歴があるベーシスト。多様な楽器をこなすマルチプレイヤーだ。
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