モーリタニアン 黒塗りの記録
The Mauritanian
G
イギリス
ケビン・マクドナルド
ジョディ・フォスター、タハール・ラヒム、ザカリー・リーバイ、サーメル・ウスマニ
オフィシャルサイト
2020 EROS INTERNATIONAL, PLC. ALL RIGHTS RESERVED.


モーリタニアン 黒塗りの記録

映画ってすごいと思いません? よくも悪くも現実の世界で起きていること(起きたこと)を映像で知ることができるって、インパクトありますよね。今でも『ホテル・ルワンダ』を観た時に感じた衝撃を覚えています。グアンタナモ収容所の拷問のことも聞いたことはありましたが、(罪を犯した)受刑者を拷問しているのだと思っていたら、起訴されていない(罪を犯したと判断されていない)人たちもたくさん収容されていて、そういう収容者を拷問していたなんて、、、、。

他国の人権に関してはものすごく厳しいアメリカなのに。でも、だから、アメリカの法律を遵守しなくてもいいアメリカと国交のないキューバという土地に収容所があるんでしょうか、、、。厳密にいえばアメリカの国土でなくとも、アメリカ軍の敷地内であったり公務として行動する場合は、アメリカの法律も遵守しなくてはならないと思うのですが、、、。(それにしても、キューバにアメリカの基地があるって、すごいですよね)



拷問は(キューバも加盟している)国連の条約において世界的に禁じられています。そして、(とっくに閉鎖されていると思っていた)グアンタナモ収容所は今もまだ存在していて、約40人の人たちが収容されているようです。(ブッシュ大統領により設立されたグアンタナモ収容所、オバマ大統領は閉鎖すると約束していましたが超党派の強い反対にあい叶わず、トランプ大統領は収容所の存続を認める大統領令をだし、バイデン大統領は任期中に閉鎖すると宣言しています)

本作の製作会社としてクレジットされている会社はいくつかありますが、そのうちのひとつSunnyMarchは、本作のプロデューサーであるアダム・アクランドと(プロデューサーでもあり出演もしている)ベネディクト・カンバーバッチの製作会社で、『クーリエ:最高機密の運び屋』の製作にも関わっています。『クーリエ:最高機密の運び屋』のグレヴィル・ウィンもそうですが、ベネディクト・カンバーバッチって、実在の人物を演じることが多い気がします。(アラン・チューリング『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』、ジュリアン・アサンジ『フィフス・エステート/世界から狙われた男』、トーマス・エジソン『エジソンズ・ゲーム』など)こういう社会派の作品は、ハリウッドじゃないから作れるのかなー、なんて思いました。



イギリスの名門中の名門校出身ですごく美しいイギリス英語を話すベネディクト・カンバーバッチですが、やっぱりアメリカ人の役をする時はアメリカ英語なんですね、、、(当たり前ですが)。そして、ジョディ・フォスター、なんか久しぶりに観た気がしますが、相変わらず厳しくも正しくまっすぐな役が似合います。もう50代後半なのですね。タハール・ラヒム、本作で初めて知りましたが、実際のモーリタニアン、モハメドゥ・スラヒと雰囲気が似てるし、いろいろな心理的な表情の演技が深くて、本当に素晴らしい。アラビア語ができるアメリカ人かと思ったら、なんとアラビア語も英語もできるフランスの俳優さんでした。

グアンタナモ収容所に収容された779人のうち、9名が収容中になくなり、731人が釈放を含めグアンタナモから解放されました。(2004年までに200人近い人が解放され、205年に250人弱の解放、2011年までに合計600人が解放され、2013年に残っていた収容者は46人で、最も危険な人物たちだとみなされていました。)グアンタナモに収容された人々の国籍は50カ国、現在でも39人たちがはまだグアンタナモに収容されています。



解放された人たちが全て無実だったかはわかりません。アメリカ政府は解放された人たちの30%ほどが解放後にテロ活動を行なったと報告しています。が、テロ活動してない70%人たちのほとんどは、「テロとの戦い」という大義名分においてアメリカ政府にある日突然日常を奪われ理不尽な扱いを受けたのだと推測します。テロの被害にあって突然亡くなったり怪我をした人もいれば、テロをきっかけに強制連行されて拷問を受けた人もいて、、、この世界には、当たり前が当たり前じゃなくなった人たちがいるんですよね。

このように真実を気づかせてくれる映画を作る人たちがいて、それを映画館で観れる。当たり前のようですが、コロナで当たり前のことが当たり前でなくなることを経験した後は、当たり前に普通の生活を送れるっていうことに感謝したいと思います。すごく見応えのある作品なので、社会派もの、サスペンスものが好きな方、(ラムズフェルドが嫌いな方も)ぜひ劇場にてご覧ください。