世界で一番美しい少年
一大センセーションを起こした『ベニスに死す』の“世界で一番うつくしい少年“。今、明かされる栄光と破滅
“世界で一番美しい少年”と称賛され、一大センセーションを巻き起こした少年がいた。巨匠ルキノ・ヴィスコンティに見出されて映画『ベニスに死す』(71)に出演、美少年タジオ役の崇高な美しさで世界を陶酔させたビョルン・アンドレセン。来日時には詰めかけたファン達の熱狂で迎えられたが、その瞳には、憂いと怖れ、生い立ちの秘密が隠されていた・・・。そして約50年後。伝説のアイコンは、『ミッドサマー』(19)の老人ダン役となって私達の前に現れ、話題となる。彼の人生に何があったのか。『ベニスに死す』に隠された真実。“世界で一番美しい少年”が見た天国と地獄。50年の時を経て、今、すべてが明かされる——。
映画史に輝く傑作『ベニスに死す』に隠された真実
リゾート地で出会った少年タジオの美貌に魅了され、苦悩する初老の芸術家の姿を描いた、トーマス・マンの自伝的小説の映画化『ベニスに死す』。すべての始まりは、究極の美を持つ“タジオ”になり得る少年を探し続けていた巨匠ルキノ・ヴィスコンティとの出会いだった。ヨーロッパ各国におよんだ大規模なオーディションにおいて、ストックホルムに暮らす15歳のビョルンの存在感は、ヴィスコンティを一瞬で確信に導く。ビョルンの運命を変えたその瞬間のオーディションの光景や映画の撮影風景、カンヌ国際映画祭の華やかな狂騒から来日時のファン達の熱狂まで・・・。『ベニスに死す』にまつわる豊富なアーカイブ映像とビョルンの回顧が、傑作の裏側を描き出す。浮き彫りになるのは、守る者が誰もいないまま、熱狂の嵐に巻き込まれていった孤独な少年の悲劇。さらには、英国ロイヤル・ワールド・プレミアにて初めてヴィスコンティの口から発せられた“世界で一番美しい少年”という表現が、その後の彼の人生を運命づけるものとなる。
カンヌ国際映画祭で25周年記念賞を受賞するなど高い評価を得て、今なお愛され続ける名作『ベニスに死す』。世界中の憧れと称賛を一身に集めながら、ビョルンの人生は、『ベニスに死す』に、そして“世界で一番美しい少年”というアイコンに、翻弄されていく——。
「ベルサイユのばら」にインスピレーションを与えたビョルン
当時から「“世界で一番美しい少年”と呼ばれたくはなかった」と語っていたビョルン。そんな彼の気持ちとは裏腹に、日本でも大ヒットした『ベニスに死す』におけるビョルンの圧倒的な美貌と存在感は、アーティスト達のインスピレーションの源となった。美しい少年達を主人公にした少女漫画が綺羅星のごとく誕生した70年代、80年代。1972年に連載が開始されて少女漫画の黄金時代を作り、アニメ化、映画化、宝塚歌劇団によるミュージカルの大ヒットなど社会現象にまでなった「ベルサイユのばら」。その主人公・男装の麗人オスカルのモデルはビョルンだった、と作者・池田理代子氏は本作で明かす。
カテゴリー: