パワー・オブ・ザ・ドッグ
広大な大地、深い人物の心理描写、無駄なく、でも丁寧なストーリー、それらを助ける音楽の素晴らしさ、最高の役者陣と演技、そして結末。久しぶりにジェーン・カンピオン監督の作品、カンバーバッチ主演ということで、かなり期待して観ましたが、うん、もう全く期待を裏切られませんでした。私にとって、いい映画の王道、というような作品です。
静かな映画でストーリーは淡々と進んでいくのだけれど決して退屈することはなく、ピリピリとした緊張感はあるのだけれど深い重厚感もあり、無駄がなく説明も少ないけれど、必要最低限のことは映像や表情や状況で理解できる。
ベネディクト・カンバーバッチは『シャーロック』で知ってから大好きな役者なのだけど、あんなに綺麗なイギリス英語を話す人なのにアメリカの西部劇でアメリカ英語を話す泥臭い役も違和感ないし、男らしい男を演じていても抑圧された愛情を持つ複雑な男性の影がちらつく繊細さは、この人ならではだなぁと。ほんと、すごい役者だなって思います。
主人公なのになんだか嫌なヤツでそんなヤツが話が進むにつれ、、、っていう内容かと思ったら、、、
タイトルの『Power of the Dog』には、意味があるんだろうなぁと思ってはいましたが、観終わって調べるまで知りませんでした。語源は、旧約聖書の詩篇22章20節。
"Deliver my soul from the sword, my precious life from the power of the dog."
“主よ、あなただけはわたしを遠く離れないでください。わたしの力の神よ
今すぐにわたしを助けてください。
わたしの魂を剣から救い出し
わたしの身を犬どもから救い出してください。
獅子の口、雄牛の角からわたしを救い
わたしに答えてください。“
ここから「悪の根源、邪悪な力」という意味になるそうです。果たして、誰が「悪の根源」なのか。
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