アネット
Annette
PG12
フランス・ドイツ・ベルギー・日本・メキシコ合作
レオス・カラックス
アダム・ドライバー、マリオン・コティヤール、サイモン・ヘルバーク、デビン・マクドウェル
オフィシャルサイト
2020 CG Cinema International / Theo Films / Tribus P Films International / ARTE France Cinema / UGC Images / DETAiLFILM / Eurospace / Scope Pictures / Wrong men / Rtbf (Televisions belge) / Piano


アネット

レオス・カラックスがアダム・ドライバー主演で英語の映画を撮ったというのを昨年のカンヌで知って、ワクワクしながら日本公開を待った本作。これまでのカラックス作品っぽくないという声も聞いたけれど、私は思いっきり期待値上げて観たのですが、「映画の始まりですよー」ってアナウンスする冒頭から痺れました。そこからの、え?監督! あ、スパークス! うわ、ロングショット!っていうオープニングには痺れを通り越して頭クラクラ。



レオス・カラックスの非凡さが詰まった本作、好き嫌いがはっきり分かれそうな作品だと思います。私は、大好きです。(世の中のカラックス好きの評価はどうなんでしょうか?) 私がカラックス作品を最初に観たのは『ポンヌフの恋人たち』で、単館系の映画館に行き始めた頃でした。そう考えると、私のフランス映画好きはレオス・カラックスの『ポンヌフの恋人たち』から始まった気がします(多分)。

『ポンヌフの恋人たち』を含む初期のアレックス三部作とは、映画の撮り方が全く違いますが、でもそれは時代も映画界も技術も監督も、変化したからなのだと思います。監督がインタビューで「デジタルになってから、好きな緑色が表現できるようになった」と語っていましたが、きっと監督が緑色が好きなのは変わらないけど、表現できる緑色が変わったように、監督の初期の作品と比べると変わったものもあるけれど、(ダメ男とのダメ男っぷりなど)ベースにあるものはやっぱり変わらない気がしました。



カラックスもすごいけど、アダム・ドライバーすごい。なんか「すごい」としか言えない語彙のなさが情けないけれど、本作での彼の演技はすごい。なぜ本作が「アネット」というタイトルなのか(映画の内容を)知らなかった私は、途中まで「タイトルは『ヘンリー・マックヘンリー』でもいいのに」と思っていたくらいです。(アダム・ドライバーの演じるヘンリー・マックヘンリーは、ちょっと(スターウォーズの)カイロ・レンを彷彿させてしまいました)

映画の最後のクレジットで、レオス・カラックスが謝辞を送っている人たちの中に、エドガー・アラン・ポー(作家)とスティーブン・ソンドハイム(ブロードウェイミュージカルの作曲家)の名前が入っていて、ポーのダークロマンティシズムとソンドハイムのミュージカルがベースになっているのだなぁと納得。ちなみにアダムドライバーの謝辞は二人。Chris Rock と Bill Burr。どちらもコメディアンです(クリス・ロックは今年のアカデミー賞でウィル・スミスにビンタされた司会者です)



元となっているのは音楽を担当しているスパークスのメイル兄弟の原案で、ロン・メイルが(カラックスと共同で)脚本を手がけています。気になる方は、エドガー・ライトが監督しているドキュメンタリーも上映しておりますので、ぜひご覧ください。(と、ちょっとだけ宣伝)