インフル病みのペトロフ家
Petrov's Flu
R15+
ロシア・フランス・スイス・ドイツ合作
キリル・セレブレンニコフ
セミョーン・セルジン、チュルパン・ハマートワ、ユリヤ・ペレシリド、イワン・ドールン
オフィシャルサイト
2020 - HYPE FILM - KINOPRIME - LOGICAL PICTURES - CHARADES PRODUCTIONS - RAZOR FILM - BORD CADRE FILMS - ARTE FRANCE CINEMA - ZDF


インフル病みのペトロフ家

なんとも言い難いタイトル(『インフル病みのペトロフ家』)と、ロシア映画だっていう情報だけで観た本作。最近観たロシア映画が『親愛なる同士たちへ』だったので、油断していました。冒頭のシーンから、なんだか個性的。音楽もかっこいいし、なんだか不思議な感覚のまま、よくわからないまま進んでいくストーリー。そして突然のロング(長回しの)ショット(20分近く!)に驚かされ、、「あれ?このシーン、、、」となった時には時すでに遅し。これ、最初から真剣に観てないとわからないやつ、だった、、、。(って、最初から油断してなくても、わからなかったに違いないけど)

今はどこに行ってもコロナでいっぱいですが、そういえばインフルエンザというのもありましたよね。数年前に一度インフルエンザにかかったのですが、それまで「インフルエンザ罹ってるかもしれないけど、(風邪だと思って)気づいてないかもなぁ」と思っていました。罹って初めて、違う、これ、そういう病気じゃない、って、それまでインフルエンザを甘くみていたことを反省させられました。

タミフルでしたっけ? 飲むとなんだかわけがわからなくなってしまうような人もでたっていう薬ありましたよね?(私もタミフル飲んだ気がしますが、夢遊病みたいにはなりませんでした) インフル病みのペトロフ家の人たち、多分インフルにやられた上にタミフルにガツンと数パンチくらったような感じです、きっと。



観終わってから、本作の監督が『LETO-レト-』の監督と知って納得。『LETO-レト-』は、独特の視点で、音楽も映像もすっごくかっこよくて、ロシア映画というよりフランス映画のようだと思った作品でした。『LETO-レト-』は、実在の人物の話だし音楽がテーマなので観やすかったけれど、本作の原作は、アレクセイ・サリニコフが2017年の「インフルエンザの中および周辺のペトロフ」という小説で、(ロシアなので直接的ではなく)揶揄的に現在のロシアの政治や社会を小馬鹿にしているみたいです。



ちょっとネタバレになりますが、冒頭5分くらいで(多分、朦朧としている悪夢?の中に)出てくる、金持ち連中、なんとなく実存の政治家を彷彿とさせるのですが、原作ではハッキリとプーチンと書いてあるそうです。インフルエンザで熱とウイルスに冒された状態のことだから、、、という言い訳で、多分いろいろと社会風刺した作品のようですが、ロシアではハッキリと批判できないのでしょう。ウクライナとのことがある今は、もっと厳しくなっているかもしれません。



本作のキリル・セレブレンニコフ監督、前回のクリミア半島侵攻やロシア政府のLGBTq政策を批判していたそうですが、芸術費を横領したという罪で裁判にかけられ自宅に謹慎されていたそうです。監督の母親はウクライナ人ということで、現在だいじょうぶかと心配になって調べたら、自宅謹慎が終わった2019年以降ドイツに亡命したそうです。ロシアで主義主張を通した芸術を貫くのは命懸けなんですね、きっと。ロシア政府に目をつけられてしまうような監督の最新作、起承転結が白黒ハッキリじゃないと気持ち悪い、、、っていう方にはおすすめできませんが、フランス映画好きな方には刺さりそうな気がします。ロングショット(長回し)を楽しみたい方、編集部に行ったら目を離さないでください。