アフター・ヤン
After Yang
G
アメリカ
コゴナダ
コリン・ファレル、ジョディ・ターナー=スミス、ジャスティン・H・ミン、マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ
オフィシャルサイト
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アフター・ヤン

うん、とっても好きです。A24製作、監督は『コロンバス』のコゴナダ、坂本龍一が音楽なんて、傑作の匂いしかしないなと期待値あげて観ましたが、裏切られませんでした。観る人を選ぶ作品なので、評価がハッキリ別れると思いますが、当館に足を運ばれる映画好きの方には刺さる作品かなと思います。



オープニングのダンス・シーンは、A24らしいスタイリッシュなビビッドさ(ここで主要キャスト全員が出ているらしい)です。でもこの派手さはここだけで、それから先は小津贔屓のコゴナダワールドです。静かにゆっくりと、優しく、感覚的にストーリーは移りゆくのですが、多くない会話は時としてとても深くて、特にヤンが語る事は、とても哲学的で美しくて切ないのです。

とにかく余分な説明は一切なく、超絶ミニマル。もっと状況を説明しろ!!と思われる方もいるかもしれませんが、観る人に委ねられているからいろんな見方ができていいんじゃないかと思います。そのため、ちょっとわからないところや消化不良なところがありはするんですが、そんなところも打ち消してしまうほどの魅力があります。



魅力の一つは映像と音楽の美しさ。アングルが、光が、空気感が、『コロンビア』で観たコゴナダ監督。コゴナダ監督、素敵すぎ。ストーリーは淡々と進むのですが、ヤンとの思い出が美しい。ヤンが選んだ記憶もとても美しい。美しくて暖かい。アンドロイドの記憶と人間の思い出の違いって何なのでしょうか。というか、人間とアンドロイドの違いって何なのでしょう。何が人間を人間と成し得ているのか。(例えばペットやアンドロイドを含めて)家族とは。人は「喪失」とどう向き合うのか。そんなイロイロを考えさせられ、見終わったすぐより、後でじわじわくる余韻もとても美しい作品です。



年末にいつも発表される今年の漢字、10年くらい前の今年の漢字「絆」をふと思い出しました。2022年を振り返りながら『アフター・ヤン』、ぜひ劇場にてご鑑賞頂ければと思います。(少し早いですが)本年も刈谷日劇で映画を観て頂きましてありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。