マリッジ・ストーリー
Marriage Story
G
アメリカ
監督:ノア・バームバック
俳優名:スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバー、ローラ・ダーン、アラン・アルダ
オフィシャルサイト
Netflix

マリッジ・ストーリー

『マリッジ・ストーリー』というタイトルと、チラシの3人のほのぼのとした雰囲気から、素敵な家族の話かと思っていたら、、、、違いました。映画を観る前に内容を知りたくない方は、以降ネタバレになるので、作品をご覧の後にお読みください。

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アメリカの離婚のプロセスは、日本とは違います。日本では互いに離婚することを納得していれば、離婚届にハンコを押して役所に届けると離婚成立ですが、アメリカでは互いに納得した上での離婚であっても、裁判所に離婚を申請して、財産や負債の書類なども提出した上で協議の結果、調停で合意を得ることができないと離婚は成立しません。協議の際に財産分与や親権などでもめると、裁判となり時間もかかるしお金もかかります。

子供の親権に関しては、日本は片親だけが親権をもつ単独親権しか認められていませんが、アメリカ(を含むほとんどの先進国で)は共同親権が認められており、共同親権の場合もきっちり半々ではなく3対7など割合が違う場合もあり、さらに訪問権や面会権と行って子供と一緒に過ごせる時間の権利などもあり(もめると)とても複雑です。

アメリカの映画では『クレーマークレーマー』や『ローズ家の戦争』『トスカーナの休日』など、泥沼化した離婚劇を取り上げた作品は多くあるので、アメリカ人の離婚は全て大変かという、そうでもなく(私のアメリカ人の離婚した人の中には、こんな映画みたいな離婚になった人はいません)多分、財産持ちの人ほど争っているのかなと思います。

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本作品のタイトルはマリッジ・ストーリー(結婚の話)。なぜ、デボース・ストーリー(離婚の話)じゃないんだろうと、観終わってしばらく考えましたが、考えれば考えるほど、離婚がテーマであっても、結婚に関するお話だったんだなぁと納得。すごいいいタイトルだと思います。「離婚」というのは離婚するプロセスというより、結婚生活の延長にあり、離婚したとしても結婚していた事実が消え去るわけがなく、離婚は結婚の一部なのかもしれないと思いました。

長い結婚生活の中で少しずつずれてしまった歯車が気づけば大きくずれて深い溝ができていて、どこでどう間違えてこんなに離れてしまったんだろうと考えても答えはでなくて。愛しあっていたはずなのに、お互いを必要としていたはずで、今でも必要とし合っているのに、一緒にいれなくなってしまう。結婚ってなんだろう、なぜ終わるのだろう、愛情が消えてなくなったわけではないけれど、むしろ愛しているだけに、受け入れられないこともあるわけで。

さらに、子供の親権が関わってくることで、ふたりの問題だったはずなのに、見栄や弁護士の思惑なども入ってきて、話がさらにややこしくなってしまいます。子供がいるふたりは、離婚したとしても終わりというわけでなく、子供を介して好むと好まざるといつまでの生活の一部に存在していたりするから。

不甲斐なさ、人間の弱い部分、拗れているところと、純粋さ、思いやり、愛する心もまた同時に見えて、かえってやるせなくなりました。愛しあっているだけでは、どうにもならないこともあるんだなというのは、結婚したことなくてもかつては心から愛した人との別離を経験したことのある人なら、わかるのではないでしょうか。

とにかく切ないテーマなのですが、離婚の話だけど、憎しみあう話じゃなく、人との繋がり、人の愛情の複雑さ、家族とは結婚とは、などについて考えさせられます。ノア・バームバック監督最高です。そして、スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーの両役者が本当にいい演技をしていて素晴らしいです。