カムイのうた
私たちを知って下さる多くの方に
読んでいただく事が出来ますならば、
私は、私たちの同族先祖と共に
ほんとうに無限の喜び、
無上の幸福に存じます。
(知里幸恵『アイヌ神謡集』より)
全てに神が宿ると信じ、北海道の厳しくも豊かな自然と共存してきたアイヌ民族。
その生活も文化も和人が入って来た事で奪われてしまいました。
生活の糧であった狩猟・サケ漁が禁止され、住んでいた土地が奪われ、アイヌ語が禁止された差別と迫害の日々。
1903年に生まれた知里幸恵さんも差別の中で生きた少女でした。
成績優秀にもかかわらず、アイヌだからという理由で希望する学校への進学が許されず、差別を受け苛められたのでした。
彼女は幼い時からユカㇻ(詩物語)を聞いて育ち、アイヌ語学者金田一京助教授から勧められ、文字を持たないアイヌ文化を初めて日本語に訳したのでした。
それは、失いつつあったアイヌ文化の文字での継承であり、アイヌ民族に自信と誇りを与えるものでした。
知里幸恵さんをモデルとした本映画を通じて、北海道の開拓に多く貢献し、差別と迫害と戦い続けてきたアイヌ民族の事を少しでも理解していただき、苛めと差別のない共生社会となり、未来に向かって日本中、そして世界中に融和な社会が拡がることを切に願い、本映画を製作するものであります。
『カムイのうた』監督 菅原 浩志
<ストーリー>
アイヌの心には、カムイ(神)が宿る――
学業優秀なテルは女学校への進学を希望し、優秀な成績を残すのだが、アイヌというだけで結果は不合格。
その後、大正6年(1917年)、アイヌとして初めて女子職業学校に入学したが土人と呼ばれ理不尽な差別といじめを受ける。
ある日、東京から列車を乗り継ぎアイヌ語研究の第一人者である兼田教授がテルの叔母イヌイェマツを訊ねてやって来る。アイヌの叙事詩であるユーカラを聞きにきたのだ。叔母のユーカラに熱心に耳を傾ける教授が言った。「アイヌ民族であることを誇りに思ってください。あなた方は世界に類をみない唯一無二の民族だ」
教授の言葉に強く心を打たれたテルは、やがて教授の強い勧めでユーカラを文字で残すことに没頭していく。
そしてアイヌ語を日本語に翻訳していく出来栄えの素晴らしさから、教授のいる東京で本格的に頑張ることに。同じアイヌの青年・一三四と叔母に見送られ東京へと向かうテルだったが、この時、再び北海道の地を踏むことが叶わない運命であることを知る由もなかった…。
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