<アフリカの角> エリトリア / エチオピア / ジブチ / ソマリア

アフリカ大陸の東側、中東との境で紅海の入り口にある突き出た辺りを「アフリカの角」と呼び、20万年前のホモ・サピエンス(現生人類)の化石が出土したところで、音声による会話能力があり、直立の姿勢で二足歩行を行い、道具を使うヒトたちが住んでいました。この辺りに(紀元前26世紀頃から)古代エジプト文明と交易していたプント国があるとされ、紀元前5世紀から旧約聖書に記録があるソロモン王とシバの女王の後継のアクスム王国が栄え、12世紀から20世紀(1974年)まではエチオピア帝国がありました。

19世紀に紅海から地中海に抜けるスエズ運河が開通すると、ヨーロッパの植民地化が始まり、エチオピアの一部だったエリトリアはイタリアに植民地化されます。その後またエチオピアと連邦を形成しますが、1960年代より独立戦争が始まり、エチオピアと数十年に渡り戦争が始まります。1993年に独立承認され、国連への加盟を果たしました。エリトリアの写真はこちらをご覧ください。

エチオピアはアフリカで最も古くからあり、今も現存する世界最古の独立国の1つですが、長く続いたエチオピア帝国は、1974年のクーデターで最後の皇帝であるハイレ・セラシエ1世が失職。ソマリア人が多く住んでいたオガデン地方の紛争、エチオピアの州の1つだったエリトリアの独立戦争が起こります。エリトリアが独立した後も、エリトリアとの国境付近では紛争が起きていましたが、2018年に首相となったアビィ・アハメドがエリトリアと戦闘によらない和平を成し遂げ、2019年ノーベル平和賞を受賞しました。

『存在のない子供たち』では、主人公のゼインが出会うラヒルがエチオピアからの移民として描かれています。(ラヒルを演じたヨルダノス・シフェラウは、エリトリアからの移民)

第二次世界大戦後アフリカの独立が進み、ジブチもフランス領から最終的には1977年に独立しますが、その後もジブチ内戦や2000年代になってからもエリトリアとの国境紛争などが起きています。
 

『世界の涯ての鼓動』にみるソマリアの過激派テロ組織の現状

ソマリアはスエズ運河の建設が始まった頃フランスに植民地化され、一部はイタリア領ソマリランドとなり、北部はイギリスに取られてイギリス領ソマリランド、フランス領ソマリがジブチ、オガデン地方はエチオピア、現地の民族主義とヨーロッパの植民地支配が複雑に絡まり、さらに西洋諸国とロシアの冷戦により、代理戦争となります。冷戦の終結してもソマリア内戦は収まらず激化し泥沼化、2012年にある程度の収束を迎えますが、未だに統一した中央政府は発足しておらず秩序は回復していません。

『世界の涯ての鼓動』で、ジェームズ・マカヴォイ演じるMI-6の諜報員ジェームズは、ソマリアに潜入します。ソマリア内戦は、北部のソマリランド(横の画像の黄色のところ)、プントランド(地図上ではインド洋に突き出ているブルーグレーのところ)とソマリ(南部の明るい主に明るいブルーのところ)と、主に3つの勢力が戦っています。

首都モガディシュは、明るいブルーのところにあり、「イスラム法廷会議」が制圧。このイスラム法定会議は、アメリカはイスラム法廷会議を国際テロ組織アルカイダの一部とみなし、内戦とともに、米軍や多国籍軍、エチオピア軍、エリトリア軍、アフリカ連合などを戦うことになります。

その後、国連が介入し、国際平和維持部隊(PKO)の派遣もありますが、テロ集団は再組織化されたり合流したり連合したり分裂したりしながら、2000年代には(イスラム法廷会議の残存勢力から発生した)アル・シャバブの勢力が強くなり、現在もアル・シャバブによる爆弾テロなどが相次いで発生しています。

『世界の涯ての鼓動』のジェームズは、そのようなソマリアのキスマヨ(地図上の明るいブルーの最もケニア側に近い地域の海岸沿いにある都市)に行き、テロ組織に捕らえられます。

冷戦時代の米露の代理戦争と内戦でずっと戦争状態が続き、大干ばつが起きている国にアフガニスタンがありますが、ソマリアのテロ組織も、アフガニスタンのタリバンに似たような支配を行っているそうです。

話はアフガニスタンのことになりますが、アメリカが関わった戦争で最も長期化しているアフガニスタンで灌漑事業を行う中村哲さんという1人の日本人医師がいます。元々はハンセン病を患う人たちに医療を施すために1980年代にアフガニスタンとの国境に近いパキスタンの地に赴任したことがきっかけで、病気の治療以前に、衛生面がよくないことから死ななくてもいい症状で多くの貧しい人が亡くなるのをみて、飲める水を求めて井戸を掘り始めます。

アフガニスタンは元々豊かな大地だったのですが、長引く戦争で緑だった大地は砂漠化し食べるものがない状況の上に、2000年代に何度も深刻な大旱魃が起き、今でも数百万人の人がが飢餓の危機にさらされていて、戦争以外でも多くの人が食糧不足でなくなっています。食べられないという貧しい状況は、都市部ではなく中央政府の力が及ばない(政府が土地の整備などを行えない)農村部や山岳部でおきているそうです。ひどい干ばつで食料どころか安全な水がない中で生きるか死ぬかという過酷な状況は、過激派を生む大きな原因の1つになります。そしてこのように内戦状態が長く続いた国では中央政府が機能していないので、過激派組織の人たちが地元の人たちにインフラや水や医療を提供したりしています。

過激派との戦いというのは、今ある過激派を制圧しても新たに別の集団が出てくるだけで、キリがありません。国際組織がその場しのぎで水や食料を送っても、根本は解決しません。まずは水と食料を確保できる大地を、現地の人が現地で調達できるもので作り、食の心配をしなくて良い状況を作ることだと中村医師は考え、用水路を作り、砂漠化した大地を農業をできるようする活動を何十年も行っています。

アフガニスタンで用水路を作る灌漑事業には、タリバンに属する人たちも手伝ってくれ、きちんと作業ができるようにタリバンが治安を守ってくれているそうです。テロ組織の行いが正当化されるべきではないけれども、どうしてテロ組織が生まれるのかという観点から、テロ組織と戦ってい行くことも必要なのかもしれません。

ソマリアを含む東アフリカでも、アフガニスタン同様に2011年に大旱魃がおき、1200万人の人々が生活を脅かされました。2016年にも干ばつは起き、現在も多くの人が人道的な支援を必要としています。『世界の涯ての鼓動』の中でも、過激派に属する医者が水の話をするシーンがあり、ここでも過激派組織が医療を提供し、水の必要性を求めています。『世界の涯ての鼓動』では、このような過激派の現状も描いているところもぜひご覧ください。

もちろん、過激派の人たちが自爆テロなどで罪のない人たちを殺すことは許されることではなく、だからジェームスはそのような過激派と闘いに行くわけです。

 

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