ラスト・ムービースター
The Last Movie Star
G
スクリーン 
10/11 - 10/24 
上映開始日:10/11
上映終了日:10/24
アメリカ
監督:ルイス・オルテガ
バート・レイノルズ、アリエル・ウィンター、クラーク・デューク、エラー・コルトレーン
オフィシャルサイト
2018 DOG YEARS PRODUCTIONS, LLC

ラスト・ムービースター

バート・レイノルズを知っている人は、過去の作品など懐かしいシーンもあり、かつてのバート共演シーンは心うたれるものがあると思います。バート・レイノルズを知らない方、現在公開中の映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』ご覧になりました? ディカプリオが演じるリック・ダルトンのモデルになったのがバート・レイノルズだそうです。

70年代の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』では、60年代に一世を風靡した西部劇に出演していた落ちぶれたムービースターという役のリック・ダルトンでしたが、モデルとなったバート・レイノルズはアメリカのテレビ番組の西部劇ドラマ最長(20シーズン)を記録した『ガンスモーク』に出演していました。(このドラマのシーズン9の23話が、『ラスト・ムービースター』では映画祭で最後の映画として上映されています。)

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『ガンスモーク』の後も、セルジオ・コルブッチ監督のマカロニウエスタン『さすらいのガンマン』で主演、70年代はヒット作も多く、活躍していましたが、スターだったのは80年代前半まで。90年代後半に『ブギーナイツ』でアカデミー賞の助演男優賞などにノミネートされはしましたが、その後は大きなヒットはありません。時期は少しずれますが、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が80年代だとしたら、そのまま落ちぶれたリック・ダルトンの老後の物語として本作を観ることもできます。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のマンソン・コミュニティが生活していた映画の撮影場だった牧場のオーナーのジョージ・スパーン役は当初バート・レイノルズだったそうで、ブラッド・ピッドとも脚本の読み合わせを行なっていたそうですが、映画の出演前に亡くなってしまいました。そのため、スタジオA24製作の本作品『ラスト・ムービースター』がバート・レイノルズの遺作となります。

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『ラスト・ムービースター』では、72年の大ヒット作『脱出』での川のシーンが使用されています。77年のメガヒット作『トランザム7000』の車のシーンも、当時のバート・レイノルズのかっこよさがよく出ています。またバート・レイノルズ本人が出演したテレビのトーク番組など実際のものが映画の役「ヴィック・エドワード」のエピソードとして登場し、バート・レイノルズのことを知らなくても、彼のドキュメンタリーを観てるかのように感じ、昔のイケメンっぷりと、今の老いぼれた姿のギャップが「落ちぶれたムービースター」にリアリティを与えます。人生の頂点が過去にあって、過去に引きづられたまま今を生きてる(かつての)ムービースターの老後というテーマで、バート・レイノルズのセルフパロディでもあり前半は特にコメディタッチですが、老いとは何か、人生とは何なのか、人生で成し遂げたものはあるのかという深いテーマについて考えさせられました。

バート・レイノルズと同じくマカロニウエスタンで人気を博した役者にクリント・イーストウッドがいますが、彼は西部劇から見事に脱却し、その後は監督業でも活躍しています。そのイーストウッドが87歳で主演した『運び屋』も、老いた人生を描いた作品でした。成功したけど落ちぶれてしまった人というテーマは一緒ですが、本作品の方がよりリアルで人間らしさを感じました。

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エンディングのクレジットで「本作品をハンナ・エイマーズに捧げる」とあります。ハンナ・エイマーズは本作品の美術部門のインターンとして働いていた17歳の少女で、交通事故で亡くなりました。年取った人から順に亡くなるということではない訳で、『ラスト・ムービースター』のヴィック・エドワードのセリフに「名プロデューサーのメラディーン氏は言った。“第2幕でぶざまな演技でも、第3幕がよければ客は忘れる”」というのがありますが、老いていても若くてもいつか終わりがくるわけで、その時に「終わりよければ全て良し」と言える人生を送ろうというメッセージのように感じました。

結末にかけて、セリフがなく「YET TO COME」という曲の歌詞が代弁する一連のシーンからの、ラストのバート・レイノルズの表情の印象深さ、素晴らしいエンディングでした。この作品で、これまでバート・レイノルズを知らなかった人も、彼の役者人生の最後を飾った映画として、バート・レイノルズを忘れられないものにしたのではないかと思います。じわじわと心に染み入る良い作品です。