私たちが光と想うすべて
第77回カンヌ国際映画祭でインド映画史上初のグランプリを受賞し話題となった、新鋭パヤル・カパーリヤー監督初長編劇映画。都会で生きる女性たちが、人生のままならない状況に対峙しながら、ありのままでいたいと願い支え合う姿に、国や文化を超えた共感が湧き上がる感動作。カパーリヤー監督と同世代で『バービー』旋風で全世界を席巻したグレタ・ガーウィグ監督を審査委員長に、日本から審査員として参加した是枝裕和監督も本作を絶賛。ゴールデン・グローブ賞など100以上の映画祭・映画賞にノミネートされ25 以上の賞を受賞、オバマ元⼤統領の2024年のベスト10に選ばれ、70か国以上での上映が決定するなど、世界中から⾼評価を獲得している。
光に満ちたやさしく淡い映像美、洗練されたサウンド、そして夢のように詩的で幻想的な世界観を紡ぎ出し、これまでのインド映画のイメージを一新、「ウォン・カーウァイを彷彿とさせる」と評判を呼んだ。 さらに、カパーリヤー監督は、2025年カンヌ国際映画祭コンペティション部門の審査員にも大抜擢。シャーロット・ウェルズ監督(『aftersun/アフターサン』)、セリーヌ・ソン監督(『パスト ライブス/再会』)など、30 代の若手女性監督たちの作品が世界の映画祭で脚光を浴びる中、現在39歳のカパーリヤー監督もまた、世界中から新たな才能として熱い注目を集めている。
ムンバイの病院で働くプラバは既婚だが、夫は外国へ行ったきり音沙汰がない。同僚のアヌは密かにイスラム教徒の恋人がいるが、親からお見合い結婚を迫られている。プラバとアヌは、ルームメイトだけれど少し距離がある。真面目で年上のプラバを演じるのは、「Biriyaani(原題)」でケーララ州映画賞・主演⼥優賞を受賞、2024年度東京フィルメックスで話題を呼んだ「女の子は女の子」に出演したカニ・クスルティ。陽気なアヌには「Ariyippu(原題)」でロカルノ国際映画祭国際コンペティション部門主演女優賞にノミネートされたディヴィヤ・プラバ。病院の食堂で働き、住居を追われ故郷に帰るパルヴァティには、日本でもスマッシュヒットを記録した『花嫁はどこへ︖』のベテラン俳優チャヤ・カダム。生きる様を表現するかのようなリアルな演技が、観る者の心の芯を静かに深く揺さぶる。
世代や境遇、性格も異なる三人の女性の共通点は、ままならない人生に葛藤しながらも、自由に生きたいと願っていること。はじめは分かり合えなかった三人が、互いを思いやり支え合っていく。そこにあるのは声高な共闘ではなく、ただ相手の存在を“認める”という温かな視線。彼女たちの姿に、国境も人種も超えて、共感が広がる。世界中に光を届ける新たな傑作が、この夏、日本を照らし出す。
カテゴリー: