シリアにて
Insyriated
G
ベルギー・フランス・レバノン合作
フィリップ・バン・レウ
ヒアム・アッバス、ディアマンド・アブ・アブード、ジョリエット・ナウィス、モーセン・アッバス
オフィシャルサイト
Altitude100 – Liaison Cinématographique – Minds Meet – Né à Beyrouth Films


シリアにて

シリアでの戦場をリアルに映したドキュメンタリー『娘は戦場で生まれた』を上映した頃は、世の中コロナでこんな風になるとは思ってもいませんでした。それから10ヶ月、世の中は激変しましたが、戦場は今も変わらず凄惨な状況なのではないでしょうか。



本作品『シリアにて』は、シリアにて、ある一日のある一室の話です。戦場シーンはほとんどなく、兵士もほぼ出てきませんが、戦場のシビアな状況が伝わってきます。戦争は前線の兵士たちだけの戦いでなく、戦場になっているところで暮らす普通の人たちの戦い、恐怖、悲しみ、、、、

敵が見える怖さもありますが、見えないからこその怖さ、音だけの怖さ。それが日常、現実という怖さ、そういった緊迫感を感じる作品になっています。こういう恐怖は、戦争を知らない私たちには想像するしかない世界の話なのですが、この作品を見て思うのは、戦争は恐ろしいということ。戦争って、どんな大義名分があったとしても、やはりしてはいけないことだと思います。



本作の中で、「私じゃなくてよかったと思ってごめんなさい」というセリフがあるのですが、平和な日本で暮らす私たちにも当てはまるセリフなのかもしれないと思いました。戦争のある地域で暮らしている人たちは、好んでその地に生まれたわけでも選んでその地で生活しているわけでもなく、時代や場所が違えば私たちにも起きうることかもしれません。

タイトルは「シリアにて」だけれど、これはシリアだけの話ではない、と思います。戦争をしている地域に一刻も早く安定がもたらされますように。戦地にいる人たちだけでなく、戦地から逃れてきた人たちや、飢餓や迫害などから日々の暮らしに困っている人たちが安心して暮らせる日がきますように。