フィールズ・グッド・マン
Feels Good Man
G
アメリカ
アーサー・ジョーンズ
マット・フューリー、アイヤナ・ウデセン、ジョニー・ライアン、リサ・ハナウォルト
オフィシャルサイト
2020 Feels Good Man Film LLC

フィールズ・グッド・マン

現在、上映中の『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』が、ど真ん中の「アメリカ」だとすると、こちらはまさにアメリカのサブカル。4chやミームなどアメリカのネットオタク文化と、トランプと極右と、ついでに新しいブロックチェーンのNFT。その全てに関わったカエル、、、それがカエルのぺぺなんです。

ちっともわからないという方のために、最初から解説しましょう。

4ch(フォーチャン)・・・日本の2ch(2チャンネル。今は5chと呼ばれる匿名掲示板サイト)に影響されて作られた英語の匿名掲示板サイトです。2chと同様に独自の文化(独自の用語や、現実とは逆のものが賞賛されたりする辺りは日本の2チャン(5チャン)と同じ感じですが、4chは2chと違って画像ベースで過去スレがないので、基本現在話題になっていること(のみ)を追っていく感じになり、人気のある(つまり常に話題になっている)スレが上位に表示されるので、4ch住人に好まれそうな画像が競いあうように投稿されていきます。

そこからミームが生まれました。

ミーム・・・作品中でも若干ふれていますが、元々はリチャード・ドーキンスという学者が1976年に『利己的な遺伝子』という著書で使った造語が発端だそうで、模範しながら伝達していく文化というような意味のようですが、アメリカで一般的に(この分野を学問として研究している学者以外で)「ミーム」というと、インターネット・ミームのことを指します。日本でも2chでアスキーアートのモナーがいましたが、4chが画像ベースのためミームは一つだけでなく、画像を加工しやすい、時事ネタなどに応用しやすい、つまり「いじりやすい」画像がバイラル的に広がったものが「ミーム」です。

このように画像をパロディ化することは、1990年代後期にアメリカのPhotoshopで加工された画像を投稿する掲示板でとても流行り(←ここもオタクの溜まり場)、日本のNHKのドーモくんがミームになったこともありました。このPhotoshop加工画像の掲示板がミームの発端だと思うのですが、2003年に始まった4chが現在のインターネット・ミームを大きく育てたと思います。それをさらに(オタクじゃない)一般人に広げたのがTwitterだと思うのですが、私がぺぺのミームを初めて見たのはTwitterでした。

それが、この下の画像のトランプのぺぺでした。



もうこの頃にはぺぺは、かなり人種差別主義の極右(オルトライト)の象徴みたいなカエルちゃんになっていたのですが、そこまでのストーリーはこのドキュメンタリーで知りました。いやいや、すごい。単なるミームだと思っていたのに、こんなストーリーがあったなんて。(この辺りはぜひ劇場にて本作をご覧ください)



もう一つ、解説をします。ブロックチェーンのNFT。ブロックチェーンから行きましょう。

ブロックチェーンというのは、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨で使われている技術で、通貨の台帳のような役割を持っています。一般的なお金の取引だと銀行から振込した際などはそのやり取りが銀行(の台帳のようなもの)に記録されて通帳とも合致しています。仮想通貨の台帳というのは、ブロックチェーン、その名前の通りを想像してもらいたいのですが、ブロック(塊)がチェーン(鎖)のように繋がっていて、そのブロック(塊)が取引の記録となり、どのように取引されているのか全ての記録が鎖のように繋がっています。

その記録は銀行のように該当銀行にだけ記録されるのではなく、ブロックチェーンを記録することのできる世界中の個人が所有しているコンピューターなどに拡散して記録されているので、データを改竄しようとしても数百、数千万とあるコンピューターの全てを同じように変更することは不可能なので、ブロックチェーンのもつ記録は改竄のしようがないデータとされています。(どういう経緯で取引が行われたかは改竄しようがありませんが、誰がそれを行なったかを明らかにせず匿名に近い形で取引をすることは可能です。)

ブロックチェーンというと仮想通貨の技術、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、インターネットのやりとりで改竄できないこの技術はとてつもなく可能性を秘めた技術で今後ブロックチェーンをベースとした新しいテクノロジーがどんどん発生していくすごい技術だと私は思っています。

すでにその仕組みは通貨だけではなくデジタルアートの取引に利用され始めています。昨年からその波は広がっていて、有名なところだと今年の春にTwitterのCEOのジャック・ドーシィーが最初に呟いたツイートがNFT(Non-Fungible Token、代替不可能なトークン)というブロックチェーンの仕組みを使って、ネットオークションで3億円くらいで落札されました。

何がすごいって、これまではデジタルアートは一度ネット上にアップロードされるとどれだけコピーしても劣化することなく、いくらでも拡散することができたのですが、NFTを用いると(拡散することは可能ですが)どれが元々のオリジナルなのかはっきりと印をつけることができることです。本物を持っているという証明書がつく、という感じです。つまり、デジタルアートを投資として売買する際に、この証明書がついていることに価値が出るわけです。

このNFTを用いてやりとりされるのは、絵や文章だったりするのですが、そこにトレーディングカード的な意味合いで、ぺぺのデジタルアートも取引されているのです。こんな記事(「カエルのペペ」モチーフのレアNFT、3400万円で取引される もあります。すごくないですか?ぺぺ。



極右(オルトライト)のミームとなったぺぺしか知らなかったので、その後のストーリー(特に香港での話)は感動しました。いやー、絵本や映画になるカエルはいても、莫大な金額で取引されたり、ヘイト協会みたいなのに登録されたりするカエル、なかなかいませんよね。アメリカのサブカル・オタク文化から、最新技術のブロックチェーンと関わるカエルの実話、気になる方はぜひ劇場でご鑑賞ください。