スイング・ステート
Irresistible
G
アメリカ
ジョン・スチュワート
スティーブ・カレル、クリス・クーパー、マッケンジー・デイビス、トファー・グレイス
オフィシャルサイト
2021 Focus Features, LLC. All Rights Reserved

スイング・ステート

はアメリカの選挙権を持っている訳でもないのに、クリントン(夫の方)が大統領になった年から4年に一度、アメリカの大統領選挙を毎回ついつい追っかけています。党の候補者を選ぶ大統領予備選挙からニュースを追っているので、1年以上他国アメリカの選挙の動向を見ているのは、もはや選挙がエンターテイメントのようにおもしろいからです。(おもしろがれるのは、選挙権がない第三者という立場だから、だとも言えますが、、、。)



本作のタイトルになっているスイング・ステートとは、作品中では「激戦州」と訳されていましたが(日本のニュースなどでも同じ言い方をしているのをよく聞きますが)、直訳すると「揺れる州」、大統領選で赤(共和党)と青(民主党)を行ったり来たりする州ということです。つまり、スイング・ステート以外は、レッド・ステーツ(テネシー州などアメリカ内陸部の州)、ブルー・ステーツ(ニューヨーク州などイーストコーストの北部とカリフォルニア州など太平洋側の州など)とはっきりしています。

アメリカの大統領選はそれぞれの選挙区で選挙人団を選び、その選挙人団の数が多い方がその州の枠を総取りします。(選挙人団の数は州によって違い、カリフォルニアやテキサスが多く、インディアナやネブラスカは少ない)この選挙人団システムのため、実際のところスイング・ステーツが大統領選の行方を決めることになるため、スイングステーツ=激戦州、となるのです。(そのため、先のヒラリーとトランプの選挙でトランプが勝利したのは、スイングステーツをトランプが抑えたからで、実は実際の投票数ではヒラリーの方が断然多かったのに、選挙人団数でトランプが上回ったため、トランプが大統領になったのでした。)ちなみに同じような「スイング」の使い方で、スイング・ボート(Swing Vote)というのがあり、これは議員さんの票などで使われ、同じく民主党の青になったり赤になったりすることで、ここでは「激戦」という意味は含まれません。



タイトルの説明だけでずいぶん書きましたが、続けようと思います。今度は原題「Irresistible」について。「(思いなどが)強すぎてやめれない、抵抗できない」「(魅力的すぎて)それなしというのを考えられない」という意味ですが、「選挙でどちらの陣営が勝つのか」というニュアンスしかない「スイング・ステーツ」より、Irresibleというタイトルの方が、この選挙ビジネスが魅力的すぎて抗えなかったという意味で、そこには両陣営の選挙参謀、町の人々だけでなく、マスコミも入っていて、本作が伝えたいことをより広義で捉えています。(が、「Irresistible」は日本語に訳しづらかったのかなぁ。)

ちなみに、赤で表される共産党は保守(南北戦争の時の南部)、青の民主党はリベラル(南北戦争の時の北部)で、本作では民主党側からのストーリーとなっています。



本作は、政治を扱っているのですが、コメディタッチ満載で、「ゲラゲラ」笑う感じのコメディではありませんが、全体を通して何度も「ぷっ」とか「くすくす」笑う感じです。いや、それにしても、とってもおもしろいです。政治を深掘りという意味でもおもしろいのですが、問題を提起しながらフィクションとしてのストーリーの進み方、オチも含めて、すごくおもしろかったです。市長選に使われるCMとか、もう本当にアメリカの政治的なCMそのもので、笑えるけど、本物は至極真面目にこういうCMに大金を払っていて、、、うん、だから、リアルに政治CMそのままが笑えるのだけど。

制作は、ブラッド・ピット(とジェニファー・アニストン)が設立したプランB。最近だと、アカデミー賞を受賞した『ムーンライト』や、同じく政治ものの『VICE』もプランBの制作作品です。アメリカの選挙に詳しくない方も、政治に興味ない方も、エンターテイメントとして楽しめますので、ぜひ劇場にてご鑑賞ください。