リトル・ガール
Petite fille
G
フランス
セバスチャン・リフシッツ
サシャ
オフィシャルサイト
https://senlisfilms.jp/littlegirl/


リトル・ガール

すべての人間の自由、平等を宣言したフランス革命(1789年)の『フランス人権宣言』は、貴族という少数の特権階級が政治や経済を独占している状態の中において、平民(市民、公民)も「人間らしく生きていくために必要な基本的な自由と権利(知恵蔵より)」を持つと宣言した文書で、今のフランスの根本となるものです。

本作の主人公サシャたち一家が生活しているランスは、パリの北130km(パリまで45分)のところにあるフランスでは12番目に大きい街。ランス郊外には広大なぶどう畑が広がっていて、この地方で製造されたスパーリングワインだけが「シャンパン」と呼べるというシャンパーニュ地方に位置します。TGVというのは新幹線みたいなもので、本作の中でサシャがママとパリに行く際に乗っていた電車も、新幹線みたいに丸っこいフォルムだったのでTGVだと思われます。ちなみに姉妹都市のひとつは、名古屋だそうです!



あ、こんな観光案内みたいなハナシは置いておいて。何が言いたかったかというと、人権先進国フランスのそこそこ大きな街であっても、サシャというひとりの子どもの自然な姿を理解してくれない人はいるんだなぁと驚きました。

サシャはサシャ。本作にでてくる7歳のサシャは、とってもかわいいです。はにかんで微笑む姿も、くるくる回りながら踊る姿も、髪をさわるしぐさも、鏡に映った自分を眺めるしぐさも、とっても女の子らしくてかわいい。



(ドキュメンタリーではなくフィクションの)映画かと思うような作りですが、時折サシャが(カメラへの)戸惑いみたいなのがみえて、リアルなドキュメンタリーなんだなぁ、と。同時に戸惑いながらも、言葉にできなくても、心に秘めた想いが涙や笑顔になり、それもすごいリアルだなぁと思いました。

今後の治療についてのシーンがあったけれど、サシャが住んでる街の学校の校長先生はなかなか理解しきれないところもあるようですが、思春期になる前から治療ができるというのは日本にはない選択肢だと思います。(日本は18歳からしかホルモン治療を始めることができません。そのために子供から大人の体に成長する思春期の間に、生まれた性別として身体が成長してしまいます。)生まれた時の性別は女性で自認している性別が男性、大人になってからホルモン治療を始めた知り合いが、思春期からホルモン治療を始めていれば、きっともっと背も高くなっていたし筋肉のつき方も違っただろうなぁと言っていました。



同じくフランスの作品で、バレエをしていて女の子になりたいと願った子の話『ガール』は、その第二次性徴期の話でしたが、最後(の前)が衝撃的すぎたのですが、本作はリアルなドキュメンタリーなだけに、これからの世の中がもっともっとサシャのような子たちが生きやすい世界となりますように、と願わずにはいられません。昨年は本当に良質のドキュメンタリーが多くドキュメンタリーの当たり年でしたが、その中に本作もいれてください。