想像
G
日本
太田信吾
板橋優里、岡田利規、朝倉千恵子、石倉来輝
オフィシャルサイト
ハイドロブラスト


想像

世界的に注目されている演劇カンパニー・チェルフィッチュ。演出家の岡田利規は俳優の”想像”という作業を重要視して代表作「三月の5日間」のリクリエーションに挑む。本作はオーディションを経て選ばれた7人の俳優のうちの1人である板橋優里に焦点を当てる。本作は板橋が本読みからパリ公演まで二年間に渡りパフォーマンスを”想像”によって豊かにしていく過程を定点観測的に見つめる実験的な構成によるドキュメンタリー映画である。小道具やセットを極力、排したシンプルな舞台空間で俳優が”想像”だけを武器に充実したパフォーマンスを繰り広げるまでのプロセス、その映画は、「他者への想像」が希薄化した現代に痛烈な批評性をもって作用するだろう。



道路で事故が起きないためにはどうすれば良いか?どんな料理を作ればお客が喜ぶか?障害を持った人が健常者と同じように通勤するためには何が必要か?わたしたちの生活空間はそのような多層的な想像、その実践の集積の上に成り立っていると言っても過言ではない。

チェルフィッチュという演劇カンパニーを率いる岡田利規もまた、「想像」という営みを重要視する作家である。演劇作品における「想像」は多様なアウトプットの形を想定しうる。俳優の演技、美術や音楽、照明や客席づくり…彼の演劇のクリエーションがユニークなのは、「想像」という営みを俳優にも徹底して求めることだ。彼の演劇作品において、俳優は演出家の指示通りに動く着せ替え人形のような存在ではない。現場では演劇作品のクリエーションにおいて、演出家が想像を働かせるのと同様に、俳優も徹底して「想像」を行う。そしてその結果、生み出された動きや、それに伴う発話が、観客のイマジネーションを膨らませる。

岡田は言う。 「演劇が社会に対してできるだけ大きな効果を持って欲しい」 鑑賞者は本作を通じて、岡田や若い俳優たちが取り組むクリエーションのプロセスから、「想像」の持つ大きな力を自らの中に再発見することになるだろう。

その気付きが、誰かを、何かを、あなた自身が「想像」し、行動することに繋がることを願って、本作は放たれる。