スウィート・シング
Sweet Thing
G
アメリカ
アレクサンダー・ロックウェル
ラナ・ロックウェル、ニコ・ロックウェル、ウィル・パットン、カリン・パーソンズ
オフィシャルサイト
Photo Credit: Lasse-Tolboll


スウィート・シング

何も知らずに見ると昔のクラシック映画かと思う冒頭、子供が線路の上を歩くと思い出してしまう『スタンド・バイ・ミー』、たまに入るカラーの映像、上質でセンスの良い音楽。そして、ビリーとニコ。

これぞ、インディ映画、ミニシアター系映画の醍醐味!っていう感じの作品です。デジタルにはないフィルムのざらついたの暖かさとか、白黒で表現する芸術性とか、ミニマルな設定とか、むちゃくちゃいいです。



子供と大人の狭間みたいなところにある感情とか表情とかって独特ですよね。ストーリー的に途中は観るのがしんどくなりますが、それでも観る価値があるのは、多分映像と音楽のセンスの良さと、ビリー役のラナ・ロックウェルの存在感なのかなと思います。彼女がウクレレを弾きながら歌うシーンとか、俺にも歌って?っていうセリフとか大好きです。

主人公のビリー、なんて飾り気のない素敵な表情だろうと思っていたら、監督はお父さん。弟役は本当の弟。監督の奥さんも出演しているし、なんなら監督の元奥さん(ジェニファー。ビールズ)がプロデューサーで、あぁ、そりゃぁ、監督ったら好きなもので好きなことを好きなようにやったんだろうなぁと。監督の実子への想いや、映画での愛とか、そういう監督にとっての「Sweet Thing(愛しいモノ」がぎゅっと詰まっていてます



私がこの作品のタイトルにもなっていて、最後に流れる曲を歌っているヴァン・モリソンを知ったのはピーター・バラカンのラジオ番組で、ビリーの年くらいのことでした。

あの頃聴いた音楽、観た映画、読んだ本から受けた影響はとてつもなく大きく、今の私という人格を形成する基礎となっています。あの頃感じた世界は今よりも小さくもあり大きくもあり、あの頃感じた人生っていうは思ったよりも大したことなかったけれど想像以上に楽しいもので、あの頃思っていた「オトナ」になって、失くしたものもたくさんあるけど得たものも大きかったなぁと思います。

ビリーやニコがいる世界や抱える問題はあの頃の私とは全く違うけれど、それでもあの頃自分を取り巻く世界から感じる痛み、喜び、友情、無敵さ、儚さは、あの頃特有のもので一緒なのかもしれません。そんなあの頃を、「愛しい君へ」、、、、と表現した素敵な作品だと私は感じました。



ウクレレ出してきて、あの頃の自分を思い出して、愛しい君へを弾いてみようかな(笑)書ききれませんでしたが、SweetThing以外の音楽も、ビリー・ホリディはもちろん、ブライアン・イーノだったり、カーフ・オルフ、そしてシガー・ロス!最高です。この辺の音楽好きな方、ぜひご覧ください。