きっと地上には満天の星
Topside
G
アメリカ
セリーヌ・ヘルド、ローガン・ジョージ
ザイラ・ファーマー、セリーヌ・ヘルド、ジャレッド・アブラハムソン ジョン、ファットリップ
オフィシャルサイト
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きっと地上には満天の星

ポスターの雰囲気とタイトルから、心温まるヒューマンドラマ的なものを想像していたのですが(そう思ったのはきっとそれは私だけではないはず)、なかなかヘビーなお話しでした。想像していたものと違うことは違うのですが、期待外れというのではなく、むしろ深かったです。。。とにかく切なくて目を逸らしたくなりつつ、ラストまでグッと惹きつけられ、どういう展開となるのか予測がつかないままやってきたラスト・・・好き嫌い、賛成反対、意見はわかれるかもしれませんが、考えさせられると思います。

親になったことあるかないかで、意見わかれるのかもしれません。主人公ニッキーがなぜそういう生活をしているのかなど彼女の背景が描かれず、現在の彼女とリトルの生活が淡々と進むだけに共感しづらいかもしれませんが、私は胸をギュッと掴まれる切なさにやられました(個人的に今年のトップ10に入りそうな勢いです)。



世界の中でも際立った大都会ニューヨークでは、ちょっとおかしい人や危険な人もいるため見知らぬ他人に関心を払わない冷たい雰囲気もあるのですが、同時に(本作の中で地下鉄の扉が閉まってしまった時に助けようとする人がいるように)温かさや、通りすがりに知らない人に服を褒められるようなフレンドリーさもある街です。

そして、アメリカンドリームを追い求め何者かになりたいと夢見る人たちがたくさん集まってくるとても魅力的な街で、上をみればキリがなく、その反面、下をみてもどこまでも下にいる人たちがいるのも事実で、私がニューヨークに住んでいる時にも多くのホームレスの人たちや、ストリートや地下鉄の中でお金や食べ物を恵んでほしいと訴えてくる人たちをたくさんみました。



子供の本当の幸せを願うなら隠れるように地下に住まわせないだろうとニッキーのことを非難することは簡単だけれど、ニッキーのことを「ひどい親」と言い捨てるのも簡単だけど、そもそもなぜ彼女はそんな立場に落ちることになったのか。その前に誰も彼女のことを助けてはくれなかったのか。確かに彼女は「正しい親」ではなかったけれど、愛情がなかったわけじゃなくて。そう考えると、ダメな親ならば親であることを諦めなければならないのか、愛情があれば親のエゴを突き通していいのか、肉体的、精神的な虐待でなければ何をしてもいいのか、そもそも「いい親」とはどういう親なのか、、、、考えさせられるわけです。



不遇な環境で生まれて努力して這い上がっていく人たちや、逆境に立たされた時に、立ち直れる人もいるとは思いますが、「正しく」「強く」いれない人もいて、自分がその立場ではない場合、なかなか弱者の気持ちは理解できないと思います。ホームレスをしている人は(普通に生活している人より)軽度の知能遅れの人の割合が多いとドキュメンタリーで見たことがあります。

もしかしたら、生まれてきた環境が違ったら差し伸べられていた手があったのかもしれない、サポートを受けることができたのかもしれない。けれども、生まれた家庭が貧困層で得られる情報が限られた中で、大きくなってしまった人たちが社会から脱落したら挽回のチャンスや救いはないのか、強者や普通の人には困らない社会でも、弱者であればあるほどやり直すハードルが高くなる資本主義社会の仕組みについても考えさせられました。

地下の隣人(ファーサイドのファットリップ)が、むっちゃいい味出してます。ある意味、彼が救いかもしれません。切ない話ですが、なかなか観る機会もない良作ですので、ぜひ劇場にてご鑑賞ください。