ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ
The Electrical Life of Louis Wain
G
イギリス
ウィル・シャープ
ベネディクト・カンバーバッチ、クレア・フォイ、アンドレア・ライズボロー、トビー・ジョーンズ
オフィシャルサイト
2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION


ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ

吾輩が主人の膝ひざの上で眼をねむりながらかく考えていると、やがて下女が第二の絵はがきを持って来た。見ると活版で舶来の猫が四五匹ずらりと行列してペンを握ったり書物を開いたり勉強をしている。その内の一匹は席を離れて机の角で西洋の猫じゃ猫じゃを躍っている。その上に日本の墨で「吾輩は猫である」と黒々とかいて、右の側わきに書を読むや躍るや猫の春一日という俳句さえ認められてある。これは主人の旧門下生より来たので誰が見たって一見して意味がわかるはずであるのに、迂濶な主人はまだ悟らないと見えて不思議そうに首を捻ひねって、はてな今年は猫の年かなとひとりごとを言った。吾輩がこれほど有名になったのをまだ気が着かずにいると見える。



と、これは夏目漱石の『吾輩は猫である』の一節なのですが、ここに描写のある猫の絵ハガキが、ルイス・ウェインの猫の絵(上記画像の絵)らしいのです。1886年から擬人化した猫のイラストを描いていたルイス・ウェインは1900年には非常に人気だったため、1900年から数年イギリスに留学していた漱石はロンドンでルイン・ウェインの猫の絵を見たと思われれます。ルイス・ウェインの猫が初めて2足歩行の猫なのかと思ったけど、それ以前に『長靴をはいたネコ』というお話しの挿絵の猫がありました。



さて、ルイス・ウェイン。ベネディクト・カンバーバッチが演じているのですが、ベネディクト・カンバーバッチ、舞台でシェークスピアもやるし、マーベルのヒーローもやるし、悪役もやればエキセントリックな役までなんでもこなす本当にいい役者さんですねー。本作でもカンバーバッチらしい味と深みのあるルイス・ウェインなのd、猫やアートに興味がなくても、カンバーバッチが好きなら満足の作品となっています。



ルイス・ウェインは猫や妻の他、電気にもすごい関心を寄せていて、原題は「The Electrical Life of Louis Wain」(ルイス・ウェインの電気的な生涯)といタイトルになっています。多分、その関係で作中に流れる音楽は(多分)、電気を使った楽器テルミンの奏でるような音で、なかなかの癒しです。ルイス・ウェインのアートと、19世紀後半から20世紀前半のロンドンの風景と、猫と、テルミンと、カンバーバッチ、ぜひ劇場でお楽しみください。