リンドグレーン
Unge Astrid
G
スウェーデン・デンマーク合作
監督:ペアニル・フィシャー・クリステンセン
アルバ・オーガスト、マリア・ボネヴィー、トリーネ・ディアホルム、ブジョーン・グスタフッソン
オフィシャルサイト
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リンドグレーン

アストリッド・リンドグレーンの名前に聞き覚えがなくても、子供の頃に『長くつ下のピッピ』や『ちいさいロッタちゃん』を読んだことある方は多いのではないでしょうか。「世界一つよい女の子」のピッピちゃんは、今でこそ普通に受け入れられていると思いますが、この本が出版された第二次世界大戦中やその前は、先進国スウェーデンですら女性や子供は弱く守られている存在でした。リンドグレーンが生まれた1907年は、日本では明治時代後期で女性に選挙権もなく、女性は結婚して家を守り子供を産み良妻賢母になるのが当然という時代。今では最も男女平等が進んでいる国の一つですが、リンドグレーンが子供の頃はまだ女性の参政権が認められておらず人工中絶も違法でした。

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リンドグレーンは、子供時代をスウェーデンの南部にあるスモーランド地方(IKEAの子供を預かってくれる場所の名前がスモーランドなのですが、IKEAはスモーランド地方の小さな村で生まれたそう!)で、生まれ子供時代を過ごしました。本作品はその子供時代から、夫となるリンドグレーンに会うまでの話で、作品中『長くつ下のピッピ』は出てきません。出てはこないのですが、どうして『長くつ下のピッピ』シリーズや『やかまし村のこどもたち』シリーズが生まれたのか、わかる気がします。

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リンドグレーンは、『長くつ下のピッピ』の出版により37歳で作家デビューしたのち、執筆活動と同時に子供の権利のために生涯を通じて精力的に活動していきます。その活動内容は現代のスウェーデンにとても大きな影響を与えたそうですが、そのような活動を行うに至った経緯も本作品では読み取れると思います。

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昨年は、ルース・ベイダー・ギンズバーグの人生を元に作られた映画『ビリーブ 未来への大逆転』や、女性指揮者のアントニア・ブリコを題材にした『レディ・マエストロ』などがありましたが、現在女性が男性と同じくらい(日本ではまだ同等とは言い難いですが)活躍できるようになったのは、このような先人の努力と活躍があったからなのですね。

リンドグレーンは、とにかく「遊んで、遊んで、遊びました」と言い切るくらい、子供の時も大人になってからも遊ぶのが大好きだったそうです。幼少期にリンドグレーンにたくさん遊んでもらった彼女の孫は、リンドグレーンがいくつになっても「子どもの心」を持っていた大人だったとインタビューで答えています。子どもの心を持ったリンドグレーンが書いた『長くつ下のピッピ』、大人になってしまった今、あらためて読んでみたいと思いました。そんな気持ちにさせてくれる『リンドグレーン』、ぜひ劇場にてご鑑賞くださいませ。