ジガルタンダ・ダブルX
伝説の“ギャングスター・ミュージカル”『ジガルタンダ』(2014)から9年、タミル語ニューウェーブ映画の鬼才カールティク・スッバラージ監督が再び世に送り出したシリーズ2作目『ジガルタンダ・ダブルX』。両作の間のストーリー上の繋がりは薄く、監督自身が「そのスピリットにおける続編」と呼ぶ本作は、ギャング対映画監督という構図は踏襲しながら、シニカルで捻った笑いが印象的だった前作に対し、ギャング抗争と西部劇、映画界内幕とネイチャードラマとが一体となった中に、差別と搾取への激烈な抗議を含んだ社会派作品に仕立て上げられた。
主演は、超売れっ子のダンス振付師から始まり自ら監督する作品中で主演をこなすまでになったラーガヴァー・ローレンス。そして、ヒット作連発の監督から性格俳優に転身したS・J・スーリヤー。このクセの強いコンビに、『グレート・インディアン・キッチン』で鮮烈な印象を残したニミシャ・サジャヤンが絡む。タミル語映画界トップの音楽監督サントーシュ・ナーラーヤナンによるレトロ・ファンクのグルーヴに身をゆだね、1970年代の熱い南インドを旅しよう。
<ストーリー>
970年代前半のマドラス(現在のチェンナイ)。警察官採用試験に受かったキルバイは、血を見ると気を失うこともある小心者。着任を間近に控えたある日、不可解な殺人事件に巻き込まれ、自身が牢に繋がれることになる。彼は、政界に強いコネクションを持つ悪徳警視ラトナに脅されて、無罪放免・復職と引き換えにマドゥライ地方のギャングの親分シーザーを暗殺することを命じられる。
ラトナは、西ガーツ山脈のコンバイの森に派遣された特別警察の指揮官で、冷酷非道な男。その兄のジェヤコディは、タミル語映画界のトップスターにして、次期州首相の候補と噂されている。一方シーザーは、「ジガルタンダ極悪連合」という組織のトップで、地元出身の野心的な有力政治家カールメガムの手足となって象牙の違法取引から殺人まで、あらゆる非合法活動を行っている。
シーザーに近づくために、キルバイはサタジット・レイ門下の映像作家と身分を偽り、シーザーを主演にした映画の監督の公募に名乗りを上げる。クリント・イーストウッドの西部劇が大好きなシーザーは、キルバイを抜擢しレイ先生と呼ぶようになる。そこから2人の運命は思いもよらない方向に転がり始め、西ガーツ山脈を舞台にした森と巨象のウエスタンの幕が上がる。
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